彼とわたしとぶり大根/石田とわ
ろんな魚が並べてあり、片隅には大根やかぼす、
お豆腐までおいてある。
彼は魚を丹念にのぞいて行く。
買っても買わなくても一つずつ見ていくのだ。
今日はどの魚がどんな姿になるのだろう。
お刺身の時もあれば、切り身だったり、時には一匹まるごと買っていく。
木の札に書かれた魚の名前は知らないものがおおく、
どの魚もスーパーの魚とは違う顔をしているような気がする。
「今日は鰤のかまと牡蠣をもらうよ。」
どうやら今夜の献立が決まったようだ。
「何にするの?」
問いかけると彼はうれしそうに笑う。
あぁ、この顔は夕べ彼女が食べたがっていたぶり大根だ。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)