彼とわたしとぶり大根/石田とわ
 



やわらかな陽の差す日曜日の午前中、
朝食の片づけをする私の背中に彼の静かな声がかかる。
         
「そろそろ買い物に行くか?」

彼女は今朝もぎりぎりまで寝ていて、慌てて仕事へ行った。
シフト制の仕事なのでたいてい日曜は仕事だ。
そして彼の休みは日曜と決まっている。
彼と彼女の休みが合うのは月に1、2度くらい。
         
彼女のいない二人だけの日曜に食料品の買い物に行くのが
わたしと彼の習慣だ。
         
「今日はお魚屋さんに行きたいな。」
日曜の買い物はわたしの密かな楽しみである。

わたしは彼とよく似ていると言われる。
[次のページ]
戻る   Point(5)