フェルミのみた泡は/mizu K
 


しゃぼん玉をつくる作法をだれもが
忘れてしまった時代
みずうみにうかぶ
背泳者と油分の分離されない光景が幾日もつづいていて
土手から飽きもせず眺めている人に
私は丁寧に包装した小石を投擲しつづける
あの黒点のカラスになりたいと
いっしんに息を吐きつづける
肺をうらがえすほどに
みずうみの
背泳者の吐く息からぽくぽくと立ちのぼっているのは
水蒸気のはずだがどうみても
それは泡だ
冬空に
フェルミが浮かんでいる
ぽっかりと
ぽっ、かりと
宵をふところにまるめてつれて
いくつもいくつも浮遊している
まるで幽霊みたいだね
そうリードを持った子どもが笑って指さ
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