彼と彼女の本棚/石田とわ
ど、知らないふりをする。
彼は本を大切に扱う。
きちんとブックカバーをつけ、その本に合った気に入りの
しおりを選ぶのだ。
だから彼女がカバーを外して本を読むことを本当は嫌がっている。
一度だけ彼女に「きちんとカバーをつけなさい」と言ったことがあるのだ。
けれど「邪魔なんだもん」その一言で彼女は自分のスタイルを変えず
また彼も強制はしなかった。
そう彼はなんでも一度しか言わない。
わかる人には一度言えばいい。
わからない人には何度言ってもわからない。
それが彼の持論だ。
彼は優しく温厚だがちょっと怖い面もある。
たとえ彼女が本のカバーを
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