彼と彼女の本棚/
石田とわ
つくってもらおう。
彼の喜ぶ顔と彼女の得意そうな顔が今から浮かぶ。
「きのうキッチンで見たよ。本読みながらコーヒー淹れたでしょ。」
彼の愛する本を彼女は愛し、彼女の愛する本を彼は愛する。
彼女と彼の本は今日もあるべきところにあり、静かに並ぶ。
わたしは知っている、たまに彼女が本に焼きもちを焼いているのを。
だから彼女はカバーを外すのかもしれない。
今夜も彼の細い指先がゆっくりと慈しむように頁をめくるだろう。
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