やさしい世界/まーつん
ましげに指を咥えてみている側の人間だった。モテるとかモテないとかの問題ではない。
何が楽しいのか分からないのだ。だから最初から求めもしなかったが、それでいて、そうした日の当たる場所で羽を広げる人々から伝わってくる喜びの波動が、妬みにも似た思いを僕の胸の内に疼かせてもいた。それは池堀でじゃれ合う水鳥が立てた波紋が、むっつりと岸辺を囲んでいる石垣に当たって跳ね返る様をどこか連想させる。楽しくやっている連中が白鳥達、石垣の岩の一つになって、そんな彼らを眺めているのが僕、という構図。あんな風に楽しげに笑ってみたいと思いつつ、お前ら一体何が面白いんだ、という感じだ。
矛盾しているだろうか。確かに
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