やさしい世界/まーつん
 
、僕は仕事が休みだ。
 明日、何が起こるのだろう。
 太陽が昇る以外に 鳥が歌う以外に 風が吹く以外に ?
 それらが素晴らしいことだというのなら、なぜ僕は、こんなにもシラケているのだろうか。

 結局、新しい場所へ続く扉というのは、自分の足で探し、自分の手で押し開ける以外にないということなのだろう。彼女は、どこかに行きたいと言った。山に登り、僕にスキーを習いたいと。僕は忙しいからといった。金がないとも言った。そう、僕はつまらない男である。でも本当は怯えているのだ。路傍の石をひっくり返した時、日差しの下で身もだえしながら土くれの中に濡れた身体を隠そうとする一匹のトカゲ、それが僕だ。行きつ
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