やさしい世界/まーつん
かかって、水鳥や魚を眺める。そして、目に見える全ての存在のうち、水以上に柔らかく、自由で、繊細なものは他にない。僕は疲れた時、そこに映る光や色の移ろいを眺めて楽しむ。晴れた日は輝き、曇りの日は影に沈む川面。
あくびが出るほど穏やかで、一人っきりで、コップ一杯の水のように、何の匂いも足跡も残さず、過去へと染みとおっていく、無味無臭の時間。そんな生き方が体に染み付いている。
このまんま、なんとなく生きて、なんとなく年取って、なんとなく死んでいくのだろうか。それならば、老人ホームのベッドの中で、五十年後に死のうと、明日、車に撥ねられて死のうと、なんの違いがあるのだろう?
明日、僕
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