やさしい世界/まーつん
 
色の照明で照らされているような道を。
 読者にしてみれば、勝手にすればいいだろうってところだろうが。一人の男の懊悩なんて、実際、取るに足らないものだ。僕の人生が明日薔薇色になったからといって、世界は見向きもしないだろう。例えば僕が明日、あの子の手を取って、センチな昼メロのように、どこか遠いところに旅だったとしても、それは僕個人に起きた革命であって、世界にとっては身じろぎするほどの、むず痒ささも感じない出来事なのだ。まったく、シラケさせてくれるよな。でも、それが現実だ。

 明日、何が起こるのだろう。
 僕の心に、何が起こるのだろう。
 僕は、飛ぼうとするかもしれない。
 鳥の真似をするトカゲみたいに。
 それもいいだろう。
 それで、世界が傷つくわけではないのだから。


 僕を放っておいてくれること。
 何をしようと、何があろうと。

 それが世界の、優しさだ。

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