やさしい世界/まーつん
 
いた。ひどく孤独で、安らかな反面どこか不安で、誰かと談笑しているときも、お義理で笑みを浮かべていた。幻想の世界へと通じる洞窟の前で、中に入ろうかどうしようかと、逡巡している感じだ。洞窟の前では、現実世界の見知った人々が、樫の木のテーブルを囲んでパーティーをしていて、゛君もおいでよ゛と言わんばかりに、こちらに向かって手招きをしている。僕はそこに加わりたいと思う半面、薄暗い洞窟の奥へともぐりこんでしまいたいという強い衝動も感じている。相反する二つの思いが演じる、頭の中の綱引きが、僕の心を金縛りにさせる。そんな感じだ。

 僕に好意を寄せてくれている人がいる。多分、僕の勘違いでなければ(そうであった
[次のページ]
戻る   Point(2)