異邦人日記から/動坂昇
それじゃいい喫煙タイムを」と言い残してぼくは去った。
あのとき彼に言わなかったことがあった。差別は自由に反する。差別が人の意見を抑圧し、人の活動を制限する限り、差別は決して自由とは相いれない。彼が「自由の概念が日本人に理解できるか」と皮肉を言いながらぼくだけではなく日本人の同僚までをも差別したとき、彼は自由を尊重せよという言葉によって私たちからまさにその自由を奪おうとしていた。その行いは、普遍思想の名を借りた植民地主義から、どれほど隔たっていたのだろう?
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