猫の徒手空拳/
カマキリ
近所の定食屋がなくなっていた
火曜日に定休日で水曜日につぶれていた
またひとつ思い出のストックを増やして
カウンター席からの、
大きめなテレビがあった風景をかりかりと刻み始める
いつかなくなってしまうことが恐怖ではないのにほんのりと気づいてしまっていて
新しいことがじわじわと心を責め立てていくのに慣れないでいた
まだ舌の上に残っているもう懐かしくなった味を
ころころと回しながら
いきなりの退屈に押し出された手が、空を切った
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