彼と彼女の無口な食卓/石田とわ
もうすぐ年末だというのに、大掃除もせず日の当たるベッドで
丸まっている彼女は来年41になる。
わたしの年齢の2倍より多く、3倍には満たない想像のつかない歳である。
彼女の夫はさらに15歳年上で世の中では「おやじくさい」と
忌み嫌われたりもする。
けれど彼女の夫、そうわたしの父には「おやじくささ」がない。
それは彼が「飯」だの「風呂」だの疲れたおやじのような事を言わないせいで
子供は勉強して当たり前、門限は必要などと考えないせいである。
彼は淡々と生きている。
仕事が終わって家に帰り、母の帰りが遅ければ何も言わずに家族の食事をつくる。
(彼がつくる夕食は
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