達磨診療所 /服部 剛
 
――再び発つ、と書いて「再発」という―― 

    * 

「人間はふたたび起きあがるようにできているのさ」 
いつも眼帯をしてる達磨(だるま)診療所のヤブ医者は 
片っぽうの目でこちらにぎろり、と呟いた。 

手渡された聴診器をこの胸にあて 
自らの鼓動をまじまじと聴いてみた 
(何処かの電信柱でカラスがあぁと一声、鳴いた) 
あの日の午後に 

    * 

僕は時折、思い出す。 
あの診療所の染みた白衣を身に纏う、達磨親父のひと言を。 
「お前さん、ほんとうの鼓動を聴いたことがあるかね?」 







戻る   Point(8)