風を編む。/佐東
凍土の独白 そのあとさき
訪れる安寧の息づかいは
無色 無音の
不可視の原野に
手放しで放り出された
あっけない夕暮れなのかも知れません
色の無い花びらの
おどる薄暮の
ながれない明日の
名前を付けられるはずだった
産声の
川の匂いのする
つめたい いしの上で
わたしは
風を編もうと思います
(胎児の姿勢で膝を抱えて
あなたの髪の長さ
わからないけれど
手編みのそれは
緩やかにのばされた
明るいつめたさで
還る場所を掠めながら
湖面の笑みの
花の胎動の
大樹の根元の
きっと それは
あなたの声に似た
穏やかな息づかいで
(ああ きっと
春の風を編もうと思う
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