ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/村上 和
 
物語を
知っているだろうか



おしゃべりなオオカミは言う
優しいでも強いでもなく
ボクはいいオオカミになりたい
その口元には
羊の肉片がついている

夕方に起きだして
いつものけもの道を行く
自分でつくった道だ
陽が沈むまでに湖畔にたどり着ければ
間に合うだろう

歩く姿は
地面の匂いをかいでいるようにも
うなだれているようにも見える



おしゃべりなブリキは言う
おとなしい我らの羊を殺すとは
なんて酷いことをするんだ
怒りからの震えなのか
絶えずカチャカチャと音がする

2メートルほどの高さの
立派なお城から
兵隊が足音をそ
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