フライ/1486 106
のツーアウト
バッターボックスに立つ少年
打ち上げた球は弧を描いて
ファーストフライで試合は終わった
やり直せればと何度も思った
やり直せない月日は過ぎ去って
あの時ボールを取られなければ
何かが少しは違ったのだろうか
揚げ物を食べるのが辛くなってきた
その頃から誕生日も祝わなくなって
友人達の誘いを断り続けたら
周りには誰一人いなくなった
格下の人間だと思っていた奴らが
結婚して子どもが生まれたとか
風の噂で耳にするたび僻んでは
蝿みたいに醜い自分に嫌気が差した
馬車馬のように働き続けて
僅かばかりの給料でやりくりして
ただただ通り過ぎるだけの毎日に
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