フライ/1486 106
 
簡単に空を飛びたいなんて歌う
アーティスト達に嫌気が差していた
風になびいて倒れそうな広告旗
己の現状を投影させながら

口ずさんだのは遠い日の歌

これといった目標も無いまま漠然と
成功したいとただただ願っていた
自分は頭が良くて才能もあるなんて
根拠も無い自信を疑ったこともなくて
社会に出てからは色々と思い知らされた
自分は一般常識も無い子ども同然だと
例えるならば激流に放り出された稚魚
動物みたいな欲求だけは膨らむばかり

毎晩のように同じ夢を見る
渡せなかった制服の第二ボタン
陽射しが強すぎて蒸発してしまった
忘れもしない18の夏の日

9回裏のツ
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