サマーホリデー1994/平瀬たかのり
 

 ゆっくり広がって
 筋から帯になって
 アスファルトを黒々と侵して

 顔を上げろ
 そのまま顔を上げてくれ
 そして気づいてくれ
 ぼくはここにいる
 あなたの顔が見たいんだ
 そして見つめあおう
 微笑みあうんだ
 この腐った暑い朝に
 ぼくら
 
 し終えた彼女
 紙を取り出し拭くこともなく
 もそもそもそもそ
 歩きはじめる
 変わらない歩調で
 色褪せた紺色スカート
 サンダルの音がカロッカリッと
 だらだら遠ざかって小さくなって
 おばさんと呼ぶに若く
 おねえちゃんと呼ぶには
 年を経てそうな
 女
 角を曲がって
 消えて
 もう蒸発のはじまっている染み
 
 休みの日には
 会う人もない

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