男性は私の身体の話をする/小川麻由美
 
数回 ドアを開け
椅子にストンと着地した
無数の とまではいかないが
たくさんのフィルムが
机の上に置かれている

挨拶を交わしたのは
とある男性

男性は私の血液の話をする
男性は私の内蔵の話をする
男性は私の骨の話をする
男性は私の乳房の話をする

白衣の男性の話は終わった
安堵の念を得られた

しかしすぐに
私の頭にはいつもの様な
雲が差しかかる

これから 何年も繰り返す
検査と開示
向き合っていかなくては

私は充分に羽を休める
しかしすぐに
羽を広げて
見聞を広げたくなる

桜の花にむせぶ頃
初めて聴く
パイプオルガンの音色に
心ふるわせていることだろう
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