私が私であることを/亜樹
 

 凛と張った送電線が朝の冷気に共鳴し
 スクランブル交差点の信号が一斉に赤になる頃
 私は私が私であったことを証明できる
 数少ない証言者である。


 温んだ泥からガマガエルが顔をだし
 蛹の中から瑠璃色の揚羽が羽化する頃
 私は私が私であったことを偽る
 唯一の虚言者である。
戻る   Point(4)