幸福と髭野原と時限爆弾/阿閉真琴
 
「ねえ、この身体のいったい何処に住めるっていうの?」
「身体に住むのかい?」
「そうよ、髭があれば荒れ野原だし、屋根もないし」
「眉毛の中はどうだろう。髪の毛の中だとか」
「不潔よ」
「でも、人類も最初はそうだったんじゃないの?なにもない地球で」
「そうね地球も隣の惑星から質問されていたかもね」
「人間は地球から材料を採りだして家をつくったんだよ」
「じゃあ、私もあなたの皮膚をえぐって家をつくればいいのね」
「ぼくの身体に住むのかい?」
「そうよ、それこそが私の幸せよ」
「人は身体に時限爆弾を抱えているんだよ」
「それは地球も同じよ。爆発するときは一緒よ」
「教えられないよ」
「何を?」
「時間を」
「いいわ、私はあなたの身体中に家を建てる」
「それは優しい行動かな?」
「人類の本能的な行動よ」
「ぼくはきみの中に住みたいよ」
「私の上でなくて?」
「きみと同じ惑星になりたい」
「いやよ」
「どうして?」
「髭が痛いわ」

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