あちらとこちら /
服部 剛
箱のカバーから、背表紙を指で摘み
中身の本を取り出して
カバーは向かいの空席の、あちらに
中身の本は目線の下の、こちらに
置いてみる
いつか人が(体を脱ぐ)のは
こういうことかもしれない
机上の古書に宿る魂が
時を越え
開いた頁から
こちらに語りかけるように
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