それぞれの雛/黒ヱ
 
緑線の汀 ふわりと蒸し
温い風に身を委ね
寒空の下に立ち尽くす人 想う

悠久の時よ 軽々と瑞流れ
いつの間にやら 既にいつかも忘れ
霞ませながらに 塗り潰して行くのか

「ああ 流されそうになる」
まだ少しの彩を ほら
無二のものと知って
「消えないで」

独りでに浸り その腕には空を抱き
黄昏と映え 陰た私の水鏡に
遠く 薄れかけの絵を灯す

別れ 相対し お互いの想いは
必ずしも 全て交わってはいなかった
「それでも」
あなたは言う 幸せの在り方を
その先に 夢幻の光を咲かせ 
時をのせた風を 癒しと成し
遠くへ吹く



紅に忍び 柔ら
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