「ペチカ」/ベンジャミン
 
(ペチカ)

あかあかと燃える薪の火に
揺りかごみたいな椅子にもたれて

(ペチカ)

この一冊の本を読み終えるまで

   ※

ゆらゆらと燃える薪の火が
まるできれいな夕焼けのようです

寒いからもう少し温めてください
せめてこの本を読み終えるまで

(ペチカ)

ちらちらと蝋燭がゆれている
明日になれば日差しが戻ります

けれど今夜はどうにも寒いので
どうかその温もりをください

(ペチカ)

せめてこの本の終わりを読むまで

   ※

涙でにじんだ文字がゆれます

明日になればまた新しい日差しが
知らぬ間にかわかしてくれるとしても

まだ夜はどうにも長いので
どこからか湧いてくる寒さに

(ペチカ)

耐えるだけの温もりを

   ※

こんなにも寒さがしみるのは

(ペチカ)

それは涙のせいではないと

(ペチカ)

ゆれて見えないこの本の終わりに
ほんの一言そえてください

   


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