異邦人日記から/動坂昇
 
酒に酔って上官の椅子に座り、正当な権限もないのに勝手に、クリスマスプレゼントなどと言って懲罰房からジャックとローレンスを出してやる。さて戦争が終わって自分自身が戦犯として捕らえられ裁かれる立場に立つと、かつてはまったく覚えようとしなかった英語を話せるようになるだけの努力をして、訪ねてきたローレンスに向かって、自分は兵士として上官の命令通りに行動しただけであってどうして罰せられるのかわからないという。

悪は英雄的ではなく、きわめて凡庸である。この言葉の意味をハラは真に体現している。おそらくハラはどこにでもいるありふれた人物である。いまでもこういう中間管理職の男はいる。問題はこのような人物の行動
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