異邦人日記から/動坂昇
某国公共放送で映画 Merry Christmas, Mr. Lawrence を観た。いまこの時期に見ることができてよかった。日本でも放映すればいいのに。いまこそもう一度観られるべき作品だと思う。
悪は英雄的ではなく、きわめて凡庸である。そのことは本作のハラ軍曹の姿に集約される。彼は俘虜収容所内でいわば牧羊犬のような役割を自任しているのだが、その行いは実際にはほぼ狂犬のものだ。軍規に違反した朝鮮人の部下に切腹を強いる。戦死したことにして彼の家族に恩給を出すためなどと言って、上官への報告を意図的に怠る。俘虜に日本的な恥の概念を説いては、どうして自死しないのかと詰め寄る。暴行する。一方で、酒に
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