月あかりの羽ばたき/まーつん
 
  それは 真夜中の出来事だった
  白いシーツにくるまった
  私の鼓膜をくすぐる
  乾いた漣の音
  胸騒ぎが
  私を揺り起こした
  その音が響いてくるのは
  窓ガラスの向こう側
  言葉のない 囁きにも似て
  私はサンダルをつっかけ
  パジャマ姿のまま
  ベランダに出た
  冷たい手すりから見渡す
  眠れる街の青白い横顔
  秋の夜空を見上げ
  降り注ぐ音の流れの源を辿る
  すると
  棚引く雲の合い間を泳ぐ
  満月が一つ
  だが 私は不意に
  眉をひそめる
  なんだろう あれは
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