「少女の指で書かれたカルテ」/ベンジャミン
 
どこからどこまでを少女と呼ぶのか
それは自分の幼年をさかのぼる程度でしか知らない

だとしてもだ
あの病院で出会ったのはたしかに少女だった

「会った」というより「会ってしまった」
そう振り返るほうが正しいかもしれない

少女にとって僕との出会いはきっと
交通事故にでもあってしまったような災難だった


   ※


待合室の白い壁をじっと見つめていると
不思議と中が透けて見そうな気がする

実際はただただ白い壁に
自分が吸い込まれそうな錯覚なのだが

そんなとき

僕は不意にぽんぽんと肩を叩かれて
何の疑いもなく振り返ろうとした

その僕の右
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