風のたどりつく先/
カワグチタケシ
風はとまったまま存在している
人が死んでも死体が存在しているように
たとえば
空のとても高いところ
大気と宇宙の境目付近で
とまったまま存在している
風は
つぎにまた
誰かに
息を吹きかけられて
動き出す瞬間を待っている
そのとき地上には別の風が吹いている
それは小さな声
それは口笛
それは歌
小さな灯火のように
耳をすます
人たちのもとへ
届く歌
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