なぜ詩を書くか 詩と向き合う/葉leaf
。事実的な答えは、詩を書く原因を述べるだけで、道徳的な正しさを問題にしません。それに対して、道徳的な正しさによって詩を書くことの理由とする立場が様々にありました。それには、(1)利己的な快楽とする利己主義、(2)社会全体の最大幸福とする功利主義、(3)人間の直観によって理解される正しさであるとする直観主義、がありました。そして、功利主義の中には、社会の中で形成された最善の規則に従えばそれで正しいとする規則功利主義がありました。
私は、詩を書く理由は、上に掲げた様々な立場のうち、どれでもよいと思います。ただ、詩というものはやはり、アマチュア意識が強く、個人の密室で書かれがちなものですから、「他人に読んで楽しんでもらいたい」「社会全体が活気づいてもらいたい」という、利他的な動機があった方が、詩の世界もより広がっていくのではないかと思います。
*参考文献
児玉聡『功利と直観』(勁草書房、2010)
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