龍は問うた
ことばではなく
ことばにならないことばで
胸の暗がりで蹲るあらぶるものに
なぜ
龍の子は
ひとを殺めたのかと
水晶に映される
流血の惨劇は
くりかえし
くりかえされて
龍は言う
この律令体制下では
結果だけが問われ裁かれるのだが
殺された側に
なんの非もなかったのか
と
応えずに
龍の子は問う
ひとを殺めたら青褪めた顔で
もう笑うことは許されないのかと
洗ってもおちない汚れた手で女を抱いてはいけないのかと
涙をながして問うた
ひとを殺めたら
群衆のまえで
全裸になって跪かねばならないのかと
龍は
なにひとつ答えられず
老いて聞こえない耳をふさぎ
遠くを見る目つきをしただけだった