シーズンオフ/オキ
 


波打ち際で、
旅人はイルカと話す少女を見た。
少女は前の日も、その前の日も、
イルカと向かい合っていた。
「イルカと何を話していたの?」
旅人は訊いた。

少女は強く頭を振って、
「イルカじゃない、
海水浴で溺れた少年よ!」
と言い放った。

波頭に陽の跳梁する真昼、
少女はイルカに乗って
沖へ出て行った

海辺の家に投宿している旅人は、
窓辺に立って、それを見ていた。
風も強く、飛沫に陽が踊って、
旅人の目には、うつつとも、
幻とも見えて、定まらなかった。

しかして、
その日を境に、
海岸に少女の姿を見ることはなかった。
旅人は間もなく
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