ふるえる/岡部淳太郎
 
ふるえるのは、風がふくからだと、夢の人はいった。
あるいはあなたのたいちょうがすぐれず、ねつのよう
なからだから、みえない思いがはっしているからであ
るのかもしれない。そのようにして、ぶるぶるとふる
えていると、すべてのものがぼやけてみえてしまうか
ら、そのためにあなたはさびしい。そして、そのさび
しいこころは、かこにあったひさんや、みらいにおこ
りうるだろうひげきを、しらずによけんしてしまう。
とりがどくさつされ、むしがちをならすようにせんめ
つされる、そんなかなしみ。そしてまた、あなたはふ
るえてしまう。ふるえるのは、風がふくからだと、夢
の人はいった。風はいやらしいうわ
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