ニシヒガシと親子/はるな
てしまったあとでしたから。
「かあさん」
子どもはもう一度いいました、
「かあさんぼくたちが、ニシヒガシのうちでいちばん東に住むニシヒガシだったら、どんなにかしあわせだっただろうね」
母親は、やっぱりなにも言えませんでした。なにか言うには、もう母親はつめたくなりすぎていました。うれしさとも、さびしさともつかない気持がおそってきて、いまにも粉々にくだけてしまいそうでもありました。
母親は、布きれにくるまった子どもをひきよせ、ちからいっぱい(と言っても、そのちからは、「いっぱい」というのはあまりにか弱すぎました、それをみていたのはお星さまだけだったのです)だきしめました。
かあさん、と、子どもは、もう言いませんでしたけれども、母親の耳には、子どものこえが、いつまでも、いつまでも、ふりつもるようにやさしく響くのです。
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