ヘッセの散歩/月形半分子
君よ
エセな聖書で
春を行け
今日のヘッセはご機嫌で
シルクハットでご登場
石畳広場に蝶を飛ばし
舟遊びに楽団引き連れ歩いては
ことごとく林檎酒に耽る
酔っ払ったなら
森の古びた教会へ
「さぁ、神も病にかかっている。
お慰め申し上げねば」
教会でヘッセは静かに
頭(こうべ)をたれ祈る
「我が主、あなた様の
お苦しみの名は
生きるにもほどがある
心よりご同情申し上げる」
若き神父は感動し
「貴方様ほど
神の苦しみをわかって
おられる方もおりますまい」
と感謝のあまり涙をながす
神父は詩人へ尊敬に頬を染めて仰ぎ見る
やがて訪れるその身に余る悲劇を知らずに
見つめ合い、やがてヘッセは静かに問う
「君、詩人の懺悔を聞いてくれまいか」
神父はあまりの事に失神す
今日のヘッセは上機嫌
エセな神父を抱きしめ
遊ぶ
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