ペガサスの瞳  /服部 剛
 
雨の降る公園で 
ずぶ濡れのまま、しゃがみ 
小石を手にした少年は 
地面に絵を描いていた 

通りすがりの僕は 
吸い寄せられるように、公園に入り 
少年の傍らに、しゃがみ 
すっぽりと傘に入れた 

「これ、何の絵?」 

「ペガサス・・・」 

誰かに殴られ 
腫れ上がった少年の頬に 
雨粒の涙が、落ちた 

「きれいな馬だねぇ・・・」 

こくり、と少年は頷き 
地面に描かれたペガサスは 
雨天の空の彼方へ 
駆けていった―― 

  * 

二十年後、詩人会の集まりで 
何処か見覚えのある 
青年がいた 
――あの日の少年だった。 

大人になった彼は、賞に選ばれるほど 
優れた詩人になっていた 

あの日、雨天の空へ昇っていった 
ペガサスの瞳が 
彼の眼鏡の奥に光った 







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