うた/月形半分子
 
(春)


君よ、春にあいましょう
ひときわ人の旅は終わらないから
つばめよ、旅人たちよ
春にあいましょう
私が春であるように、君が春であるのだから
ふたりあえた季節に花が咲けばそれでいい
旅人よ、旅人たちよ
その旅がなんだったのか
あまたの辛苦も悲しみも
美しいばかりの浪漫も
君の旅を私の旅を
この満開の桜の下で語ろう
そしてまたこの満開の桜散るなかで別れよう
満ち足りて花の下に立つ旅人よ
生き溺れて力なく花の下にうずくまる旅人よ
それでも花に間に合った君よ 私よ
散れども散れども咲く花のように
君と私が出会う時に、花があればそれでいい



(夏
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