背中を見せた夢/まーつん
 
心地よい重さ。そしてあの、うなじへの口づけ。すべての感情が、ノボカインを注射された時の口中の肉のように、半ば麻痺していたせいで、彼女の肌への欲望も、彼女の死への悲嘆も、その感情が完全に目覚めきる前に、夢の中を流れる不規則な時間の波に押し流されてしまったこと。そして、諦観と無関心に薄められた、白けた味わいのカルピスのような後ろめたさ。

 なによりも悲しいことは、悲しめないことだった…それは、僕が手にしたものは、全て遠からず失われてしまう運命にあるのだと、初めからそう決めつけている気持ちがどこかにあったからだろう。その不甲斐無さ。人を心から愛せない(愛が、どんな行為であるかは謎なのだが)、誰かの存在に、自分の大切な何かを託せない…

 …その臆病さ。














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