背中を見せた夢/まーつん
囲った、狭いが居心地のいい空間だった。
彼女が何かを言った。少しいたずらっぽい声音で。正確にどんな言葉だったのかは思い出せないのだが、僕の知らない男から、うなじに口づけをされたの、というような内容だったと思う。僕は少しむっとしたものの、そのまま身じろぎもせずに、少し油じみた顔の顎先を寝台のまるい縁に押し付け、部屋の床…踏み固められた土の地肌だった…を見つめていた。それからどんな会話をし、どんな成り行きが作られたのかはわからないが、彼女は黒いペンで僕のうなじの所…首の付け根の当たり…に、印を付け始めた。その感触をまだ覚えている。どこか他人事のように無感覚な皮膚を揺らして、濡れたインクを干しつ
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