居残り/山中 烏流
 





 目が覚めるほど愉快だった国で

 いつか帰る予定の町へ向かう、片道切符を捨てたあの日

 ぼくは

 お母さんを、お袋と呼ぶようになって

 いつか恋する予定だったあの子は

 上野の古びたビジネスホテルで、産声をあげて

 黙々と教室の窓を拭いていた

 きみは

 上手にスカートをはためかせながら廊下を走って

 それきり、戻ってこなかった









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