はつ夢 /服部 剛
年賀状の写真から
親戚の一歳のこどもが
すくっと立って、こちらに
きょろりとした目で
新年の挨拶をする
その夜
嫁さんが皿を洗う音を聞きながら
一足お先に布団に入った一歳の周に
僕は子守唄を歌う
ミルクをいっぱい飲んだ後
椛(もみじ)の両手を開いたまんまの
あどけない寝顔
(パパが、守ってやるからな・・・)
人より染色体が一本多く
なかなか立たない周をみつめ
思わず心に、呟いた。
皿洗いを終えて一息ついた、嫁さんが
ゆっくり僕に、お屠蘇を注いだ。
テレビでは「五体不満足」の乙武さんが
とてもお洒落な服を着て
これからの夢を語っていた
静かに頷く嫁さんに
今度は僕が、お屠蘇を注いだ。
新春の、夫婦で嗜(たしな)む酒の味に
ほろ酔いつつも
ふたりの目線の先で夢を見て
布団の中ですやすや眠る
周の椛の手のひらが、開く
明日の夢を掴むように
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