さいごの一枚/石川敬大
しぬなんておもいもしなかった
ひとが
海をみていた
くっきりカゲを増した
夕映えの
不知火干潟で
たぶん夢中で
ファインダーをのぞいていたにちがいない
もえのこる野心と情熱とが
干潟といっしょに撮りこんでいたから
しぬなんておもいもしなかった
ひとが
きれいな夕映えの干潟から出社して
嬉しい月曜日になりました
Hさん
テーブルに飾られたいくつかの写真を
ぼうぜんとみつめ
角島
南阿蘇
高千穂峡
中島川の眼鏡橋
錦帯橋の夜景
春には桜を愛でる旅
にほんじゅうだんしてみたい
喜々として出かけていたんですよ 父は
うつむきがちの
娘さんの横顔がむねにせまって
おもわずいきをのみました
Hさん
カメラを奨め
果たせなかった約束の
ぼくのこと
おぼえていてくれていますか
またいっしょに酒でも酌みかわしましょう
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