野良犬の日々/済谷川蛍
詰め込まれたリュックが両肩に食い込む。まだ昼間。難波ウォークに座れる場所がある。そこからスイスホテルの方角に空を見ると心の休まる風景であることに気づいた。身体を横にして眠ろうとすると警備員に注意された。僕はすみませんと笑ってその場を離れた。
あと一週間働けば残り三万円ほど親に金を返せていた。しかし九月になってから仕事が減っていたし、僕は心身ともに疲れ果てていた。気性が荒いトビやドカタ、大工や同じ派遣の若者と仕事するのも嫌だった。だからやめた。実家で飼っているネコに会いたかったし、家で休みたかったので帰ることにした。僕は和歌山県の高野山大学の学生で夏休み中だったのだ。実家は山口県。新幹線代は親か
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