宿命/渡辺亘
自分だけにしかできない冒険がある
エッジのきいた言葉を
声高に叫ぶより
むしろ平明な言葉を
静かに語りたい
憎しみを克服するには
どうしたらいいのか
考えて考えて
考え抜いて
何千日もの時がすぎた
しかしその何千日も
宇宙の営みからみれば
一瞬だと気づいた時
私の存在は尊いものだと気づき
彼の存在も尊いものだと気づいた
全ての関連は美しい
時は永遠でありながら
一瞬に凝縮され
空間は無限でありながら
私という生命に収まっている
彼は私の中にあり
私も彼の中にある
人の尊厳は代替のきかないものであり
それは生命が永遠であることにより
根拠づけられる
それは自分自身に問うしかない
なぜなら私の生命の中にこそ
答えが豊かに散りばめられているからだ
空は青かっただろう
夕焼けは赤かっただろう
原初の狂暴なまでの
おもいを今思い出す
宇宙の広さに想いを馳せる時
なぜか厳粛な気持ちになるのは
そのせいではないか
終わらない旋律は
今も私の中に鳴り響いている
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