風の通り道/カワグチタケシ
 
風は光にあこがれる
道が光る
海が光る
光が光る

風は光を持たない
風は色を持たない

わたしたちが見ているのは
風ではなく
風の通った跡
風の通り道
風の過去の姿

それでも

わたし達は風を知覚している。見て、聞いて、肌で。
時には、季節の花の開花を知ることで。
何かの仕事に引継ぎをされて、
風はわたし達に知覚される。

風は内面にあこがれる
笑う人の
不機嫌な人の
頬に
風が触れていく
駱駝の背中に
波立つ水面に
風が触れていく

風は内面には届かない

それでも

わたし達は風を知覚している。
想像することによって。
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