0/000/はるな
 
この日に、わたしは休みを取って、部屋のなかにいた。晴れていたようにもおもうし、雨が降っていたようにもおもう。寒くはなかったはずだ。部屋のなかにいて、床へ座っていた。夫とふたりで決めたカーテンはベージュに茶色のレース模様がはいっている。思い出せる限りのことを思い出したかった。くっきりと、そこにあるかのように描きだそうとした。お湯の沸くおと、下校する小学生たち、まだ耳慣れない町内放送、遠くのサイレン。磨かれた床、壁紙は白く、テレビもパソコンもつけず、エアコンも空気清浄器もはたらかず、ただお湯の沸くおと。生まれてから24年間、死に損ねてから8年間、平成24年、西暦だと2012年、知っていることの、思い出
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