0/000/はるな
い)、電車の音(線路は寝室のすぐ向こうにある)、扉、扉を開け閉めする、窓、窓ガラス、カーペット、レース模様のカーテン。タオル、ワイシャツ、靴下、そしてハンカチ。
はっきりわかった。すべては、すべてで、わたしはもう介入できないと思った。こんなにも存在しているのに。存在しているのに。存在しているのに。そして、世界は、ここにあるのに。ずっと、前から、そもそものはじめからここにあったのに。知らなかったことを知っても、もう、だめだ。わたしはこんなにも存在していたのに、わからなかった。泣きながら、息を吸い込んで、この世は終わらないだろう、と思った。すべては終わらないだろう。やがて時間も消滅するだろう、けれどもそのとき、すべては終わらないだろう。あるものは在り続け、無いものは、無いものとして、そこへその通りに存在する。すべてがこんなにいたいたしく、切実に存在しているということが、皮膚じゅうから理解でき、もういられない、とわかった。思うのではなく、感じるのでもなく、すごくはっきりとそれがわかった。
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