0/000/はるな
 
濯もすべて済ませてしまって、洗濯ものをたたんでいた。夫の下着や靴したは、取り込んだすぐあとにでも夫のにおいがする。獣のようで、それでいてこころよい匂い。あたたかく、かわいた夫の抜け殻たち。なんども水をくぐって少し色あせたシャツ。窓ガラスは透明だったので光をよくはじいた。昼間の部屋はそとが晴れていればその分だけ薄暗く、はっきりと内と外がわかる。撫でたかたちに色の変わる、毛足のながいカーペット。もうおしまいだ、ということがよく理解できた。ここでおしまいだ、ということ。何も望んでいなくて、でも、足りない。それは欠落でも不在でもなく、まして喪失でもなく、それは、それは最初から最後までただ無い、という、それ
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