0/000/はるな
い出せる限りのことを思い出そうとしていた。そして、それは失敗した。
0/01 夫にキャメル色のコートを買ってもらった。フェイクムートンでできていて、裏地がすべてボアになっていて軽くて暖かい。帰って着せて見せたときには、わたしの髪をすこし整えてから一歩さがり、全身をするりとみわたして、いいじゃないか、と言う。管理されている、と思うし、少しずつ、支配がひろがっている、と感じる。問題なのは、そのこと自体ではなくて、そういうことのすべてを是としている自分自身だ。
0/00 晴天だった。空は1000人の天使たちが磨き上げたみたいにひかって、そこらじゅうに真っ白けな光が落ちている。前の日に掃除も洗濯も
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